たとえば貝類のメス化は排水中の人間の屎尿に含まれる本物の女性ホルモンのせいであり、人口が増えたために起こっていることだ、などとするもの。しかし、筆者にはそちらこそ眉つばに思える。人工増が原因ならば、アメリカの五大湖のひとつであるエリー湖の鮭がメス化するよりも先に東京湾の魚に異常が現れてしかるべきだが、そういう話は聞かない。(アメリカの人口密度は32.7人/㎢。日本の人口密度は336人/㎢)。
また、鶏にDDTを与えると、オスに性徴が現れない、などの実験結果も確実に存在する。(1950年のアメリカ、ニューヨーク州、シラキューズ大学の研究によれば、若い雄鶏40羽に2~3ヶ月に渡ってDDTを投与して様子を見たところ、1羽の鶏も死にもせず、目に見えるような病気もなかった。しかし普通の雄鶏であれば、次第にトサカが赤く大きくなり、首にはピンクの肉垂れが現れるのに、これらの雄鶏たちにはいつまでたってもそうした性徴が現れない。見かけはどう見ても雌鶏のまま。しかも精巣は通常の18%の大きさしかなく、去勢されたと同様の状態だったという。 出典:『奪われし未来』シーア・コルボーン+ダイアン・ダマノスキ+ジョン・ピーターソン・マイヤーズ著 1997年 翔泳社)
筆者はDDTをはじめとする環境ホルモンが実際に人間や野生生物の生殖能力に悪影響を及ぼしていると見ている。