油糧原料はほとんどが輸入
環境への負荷を減らすためには、食料輸入を減らすことが大切、というのはこれまで見てきたとおりだ。じゃあ、ボクらが消費する食用油は、どの程度国内で採れたものか、知っているかな? 答えはわずか3%。それ以外はすべて輸入なんだ。キミがファストフードで食べるフライドポテトも、ドーナッツも、コンビニで買うコロッケも、唐揚げも、レストランで食べるとんかつも、てんぷらも、そのほとんどが外国産の油で揚げられている。現代人が大好きな調味料マヨネーズも、その7割は油だ。パンにつけるマーガリンも、またパンやお菓子に入っているショートニングも、植物油が原料だ。そうしたものを好んで食べる現代人の食生活が、日本の食料自給率を低下させ、地球環境に負荷をかけている。
だからそうした食品の消費を減らすことは、油の原料となる作物の輸入を減らし、地球環境への負荷を減らすことになる。使い古したてんぷら油を捨てずに回収することで環境への負荷を減らそう、という試みもあるけれど、それよりさらにいいのは、最初から使わない、あるいは使う量を減らすことなんだ。
油の摂りすぎは健康にもよくないから、油を減らすことでキミの健康度もアップする。
油のほとんどは遺伝子組み換え
もうひとつ、現代の食用油の大きな問題点を挙げると、そのほとんどが遺伝子組み換え作物が原料だということだ。コーン油、大豆油、菜種(キャノーラ)油、綿実油、またこれらを混合したいわゆる「サラダ油」は、「国産」と明記していない限りは外国産で、そのほとんどが遺伝子組み換え作物からできている。
でも、このことはほとんど知られていない。「遺伝子組み換え」とどこにも書いていないからだ。遺伝子組み換え食品には表示義務のあるものとないものがあるんだが、ほとんどの人がそのことを知らないため、「遺伝子組み換え」と書いていなければ非遺伝子組み換えだろう、と勘違いしてしまっている。この表示義務の問題についてはこちらで詳しく解説しているので、ぜひ見てほしい。
遺伝子組み換えは環境に問題
遺伝子組み換え作物は人体への安全性に疑問があるほか、いろんな問題をもたらしている。遺伝子組み換え作物の花粉は風に乗って飛んでいき、在来の作物がそれを受粉すれば、健全な在来種が失われてしまう危険がある。遺伝子組み換え作物とセットで使われる除草剤は畑周辺の人々にガンや出生異常などの健康被害をもたらし、また蝶などの昆虫を減少させたり、畑周辺の水鳥が死ぬなどの被害も報告されている。除草剤の使い過ぎで、除草剤のきかないスーパー雑草も出現している。人間が薬剤で自然をコントロールできる、と考えるのは思い上がりでじゃないかな。自然の方でもそれに対抗して進化を遂げるから、結局いたちごっこになってしまう。殺虫毒素をもった遺伝子組み換え作物を栽培することで、殺虫毒素のきかないスーパー害虫も出現している。
農家や消費者の権利が奪われていく
さらに大きな問題なのは、アメリカに本拠地を置くモンサント社という企業が、組換え遺伝子は知的財産であると主張し、その特許権をほぼ一手に握って倫理にもとる企業活動を行っていることだ。
風にのって飛んできた遺伝子組み換えのタネが、畑で発芽し、在来種に混じって生えてしまったというだけで、農家が知的財産の侵害だとして裁判に訴えられたり、そのせいで破産させられたり、ということが北米では何百件も起こっている。遺伝子組み換え作物など栽培したくもないのに、脅迫まがいの圧力によって、栽培せざるを得ない羽目に追い込まれる農家も多い。モンサント社はアメリカ議会や政府を裏で操り、さらに世界中で種苗会社の買収を進め、食を通じて世界を支配しようと狙っている。このままではあらゆる食べものが遺伝子組み換えになってしまい、選択の余地がなくなってしまう危険すらあるんだ。農家は栽培したい品種を選ぶ自由を奪われ、最終的には消費者も、遺伝子組み換えでない食品を選ぶ自由を奪われていく。何を栽培し、何を食べるかを決める権利=食料主権が奪われてしまうんだ。キミはそれでもいいのかい?
民主主義に反するこんなモンサント社の暴走を止めさせるための方法はいろいろ考えられるけど、もっとも手軽なのは、モンサント社の売り上げを減らすことだ。モンサント社の主力商品である遺伝子組み換え作物の最大の用途は家畜飼料、その次が油だ。つまり、畜産物と油の消費を減らすことは、モンサント社の売り上げを減らすことに直結する。(さらにいえば、モンサント社のもうひとつの主力商品はラウンドアップという除草剤なので、有機食品を選ぶことも彼らの売上減につながる)
環境を守るためにも、ボクらの自由と民主主義を守るためにも、油の消費を少しでも減らすような食生活を心がけよう。
〇もっと和食を
世界遺産にも指定された和食。その良さのひとつは油をほとんど使わないこと。もっと和食を食卓に載せよう。
〇揚げない揚げ物!?
揚げものにしなくても、それ風の料理をつくることは可能だ。パン粉を炒めてくっつけたコロッケ、油を塗ってグリルで焼いた春巻きなど、工夫次第でいろいろ楽しめる。
〇マヨネーズの代わりは
マヨネーズの代わりに、豆乳ヨーグルトに塩を混ぜて使ってみよう。クリーミーで適度な酸味があり、しかもカロリーは大幅オフ。ダイエットしたい女性やメタボが気になる男性にもおすすめだ。
〇国産なたね油を
油は国産のなたね油を使うのを基本にしよう。国内では遺伝子組み換え作物の商業栽培はされていませんので、「国産」と明記されていれば安全だ。高級スーパーや自然食品店、生協などで扱っている。なたね油は現代人に不足しがちなオメガ3系脂肪酸の割合が比較的多く、健康面からも理想的なんだ。